(20)奇跡の書クルアーン 2

 クルアーンの特異性を際立たせるため、ここで少しクルアーンと新約聖書を比較してみましょう。

 新約聖書は、複数の筆者が綴った記録と書簡から構成されています。

 イエスの言行を記録した福音書はその場に立ち会ったか、立ち会った者から伝え聞いたと想定される者によって書き留められ編纂された部分的な採録です。ついでながら、新約聖書の福音書はイエスが用いられた日常語のアラム語によるものではなく、ギリシャ語によって書かれています。

 新約聖書にはところどころで「私」という一人称が出てきますが、それぞれの筆者が用いたものです。つまり、新約聖書には、「私」と語る複数の筆者がいる、ということです。

 一方、クルアーンに用いられる一人称は、アッラーおひとりによるものです。聖書は神の霊感を受けた者によって書かれたというのがクリスチャンによる聖書の位置づけですが、クルアーンに筆者はなく、預言者ムハンマドは天使ジブリールから口移しされた神の御言葉の記録・伝達者にすぎないのです。

 もしクルアーンが山に下されていたら、山は恐れおののいて崩れ落ちただろうとクルアーンの一節は言っています(第59章[集合]21節)。ムスリムは、神の語り給うた言葉を口にする礼節として、クルアーン読誦の前には礼拝前の身支度と同じように水で身を清めます。