はじめに

 アッラーの使徒ムハンマドは、高弟の一人ムアーズをイエメンの総督として派遣するにあたり、以下のように命じられた。「おまえはこれから啓典の民の許に赴任するが、先ず彼らに、アッラーの他に神はなく、私がアッラーの使徒であることを説きなさい。そして彼らがそれを受け入れたなら、アッラーが1日に5回の礼拝を彼らに義務として課されたことを教えなさい。そして彼らがそれを受け入れたなら、アッラーが富裕者から喜捨を集め貧者に分け不えることを彼らに義務として課されたことを教えなさい。しかし彼らがそれを受け入れても彼らの大切にしている財産までも取り上げてはならない。また丌正に苦しむ者の訴願を心して聞くように。彼らの訴願とアッラーの間には御簾の隔てはないのであるから。」(『日訳 サヒーフ・ムスリム』第1巻、40頁参照)

 前編「やさしいイスラーム講座」では、ムスリム(=アッラーに服したもの=いわゆるイスラム教徒)が信じる六つのことについて解説しましたが、イスラームの信仰は信じることだけでは不十分です。信仰とは心の行為ですが、人は心と体から成り立っていますから、心だけでなく、それを体現する行為も欠かせません。それがイスラームの「六信五行」と呼ばれるものの五行、つまりムスリムに義務として課された五つの行です。この「続・やさしいイスラーム講座」では、その五行を一つ一つ順を追って解説します。なお、上記に引用の預言者ムハンマド(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の言葉はこれらの義務が一度にではなく段階を追って教えられるべきことを示しています。

 イスラームの信仰を建物にたとえるなら、五つの要の義務は建物を支える五本の柱に相当します。強固な建物には五本の柱が不可欠です。四方を支える四本の柱と、それらの支柱をなす五本目の柱です。それらの柱の一本でも欠ければ、建物は不完全で、ちょっとした衝撃を受けただけでぐらぐらと揺らぎ、倒れかねません。逆に五本の柱が強固なら、どんな強風が吹こうとも、多少のダメージは十分修復可能です。その五本の柱とは、

(1)信仰告白
(2)礼拝
(3)喜捨
(4)斎戒
(5)大巡礼  の五つです。