導入部

 「ラーイラーハ イッラッラーフ(アッラー以外に神はない)、ムハンマドゥン ラスールッラー(ムハンマドはアッラーの使徒である)。」

 私がフランスでシャハーダ(信仰告白)を唱え、ムスリムになってからもうすぐ1年になる。入信はごく自然の成り行きで、そのときはさほど大きな感動はなかった。また、これほど大きな人生の転機になろうとは予想もしていなかった。去年の12月の最初の日曜日にパリのモスクの門を初めてくぐるまではイスラームのことをまるで知らなかった私が、それからわずか1月半後にはムスリムとなり、半年後にはエジプトでアラビア語を学んでいるのだ。

 確かに思いがけない急転換があったが、入信から今日までのことを振り返ってみると、ずっと必然の糸に引かれてきたような印象がある。そればかりではない。生まれてから入信に至るまでの道程も、ずっと今日の日に至るべく導かれていたのだという気がしてならない。

 私がどういう経緯でムスリムになったかを話す機会はこの1年を通して少なからずあった。日本人のムスリムということで、日本でもエジプトでもみなが私の体験に興味をもったし、私の方でも1人でも多くの人に私の話を聞いてもらいたかった。入信の喜びは時を経るにつれ、また話す回を重ねるにつれ、風化するどころか逆に増す一方で、話すたびに新たな感動が蘇り、感情の高まりを押さえるのに苦労する。入信から1年を迎えるにあたって、それをきちんと書き留めておこうと思う。そして、もう1度私の中で何が起こったのかをよく振り返って見ようと思う。

 イスラームに出会ってから入信するまでに要した日数は1か月半と短いが、私がイスラームという真理を、それと知らずに探し求めていた期間はそれより遥かに長い。私がムスリムになれたことに言い表せない喜びと、言い尽くせない感謝の気持ちを覚えるのも、イスラームに出会うまでの長い、本当に長かった道程があるからだ。ともかく、去年の今頃に時をさかのぼることにしよう。