ズル・ヒッジャ13日

 朝食後、帰りの切符が配られ、午前2時発の便でジェッダを発つことがわかった。夕方6時にミナーを発ち、マッカに行くことになったので、午後早々に最後の石投げを済ます。

 聖モスクの前でバスを降りると、ちょうどマグリブ(日没後)の礼拝が始まったところで、外の広場はびっしり礼拝者で埋まっていた。中に入ると、中も人で一杯。私たち同様、今日を最後にマッカを発つ人がほとんどなのだろう。とりあえず空いたところでマグリブの礼拝を済ます。その後、中央のカアバの近くに行こうとしたが難しいので、エレベーターで2階に上がる。下はカアバの周りの天に開いた部分がすべてタワーフする人で埋まっていた。2階でも多くの人がタワーフをしていた。私たちもその輪に加わる。なにしろ円周が広いため1周が長く、普段カアバの周囲なら20分でできるタワーフに1時間半かかってしまった。足が棒のようで、最後のあたりはほとんど足が前に進まない感じだった。これを最後にマッカを去るわけだから、本当ならば感動のタワーフとなるべきはずだが、ただもうあと何周ということだけを頼りに、アッラー、アッラーという呟きを音頭に足を前に出すのみだった。回り終え、へとへとになりながら2ラクア礼拝し、モスクを後にした。マッカを離れる名残の気持ちはなく、ハッジを終えたという感動もなく、ただあともう少しの辛抱で家に帰れるという思いがあるだけだった。

  別れの周礼にて

  神の館を巡る
  妻と手をつないで歩く
  いつまでもこうして
  手をつないで歩いて行けるようにと
  祈りながら歩く
  館を巡る者全てに
  慈悲を垂れ給えと
  祈りながら歩く
  妻の手を握りしめて歩く

 空港のロビーの隅に腰を下ろして搭乗時間を待っていると、夫が、ほらこんな詩を作った、と手帳をみせてくれた。こうしていつまでも手をつないでアッラーに至る真っすぐの道を心を一つに歩いていきたいと思う。

(1413年12月/1993年6月)