5月15日

 夕方7時、リヤード行きの旅客機に乗り込んだ。このところ旅行が多く、飛行機に乗る回数が増えているので、今度こそ落ちるかもしれない、この2年間すべてがうまく行き過ぎたからこのあたりで不意打ちを受けるかもしれない、などという不安が心をよぎる。ジェッダ-リヤード間は飛行機で1時間強程度なので、乗ったと思うとまもなく下降し始めるのだが、今回は町の明かりが見えてからしばらく時間が経つのに一向に着陸態勢に入る様子がない。おかしいな、と思っているうちに、悪天候のため着陸を見合わせている、というアナウンスが入った。数日前の大雨が思い出された。窓から外を見ると地上の明かりがいつもと違ってぼんやり曇っている。何度か旋回を繰り返したのち、エンジンの音が変わり、いよいよ着陸態勢に入ると察せられた。と突然、ガクッと機体が揺れ、大きく高度が下がった。思わずみな声を上げた。その後も小さな揺れが続き、後ろの座席の高齢の女性が「ラーイラーハイッラッラー(アッラーよりほかに神はない)」、「ラーハウラワラークゥワタイッラービッラー(アッラーによるほかなんの力もない)」などと繰り返し唱え始めた。アッラーに祈る声が座席のあちこちで上がる。もちろん私も夫と手を握り締めてアッラーに助けを求める。落ちることはないとは思うものの、万一・・・、と思う。自分が今死ぬことに関しては未練はないが、イスラーム布教の夢を思うと心残りだ。しかし、ムスリムになる以前は、今死ぬようなことがあったらどうしよう、真理を見いださないまま今死んだら、死んでも死にきれない、という思いが強くあった。それに比べ今はなんと穏やかな心境か。