8月12日

 夏の休暇を日本で過ごすため、深夜にリヤードを発った私たちの飛行機はタイ時間で午前11時ごろにバンコクに着いた。乗り継ぎの便は夜の10時過ぎなので、まる1日時間があった。できれば町に少し出てみようというつもりがあった。ともかく、まず、レストルームに行って休もう、とワゴンを押しながら長い通路を進むのだが、他の日本行きの人ともはぐれ、人に尋ねても要領を得ずあっちだこっちだするばかりだ。ようやく、サウディ航空のタイ人スタッフを見つけ話しかけると、彼は私の黒装束に目を留め、ムスリムか、と夫に尋ねてきた。彼自身もムスリムで、アラビア語を割合流暢に話した。そして我々がレストルームを探しているのだ、と言うと、ちょっと待て、と言い、そのうちエヤーステーションホテルに案内してくれた。ビジネスかファーストクラスになると乗り継ぎの待ち時間をそこの1室で休めるようになっているらしいのだが、エコノミークラスの我々にその1室を割り当ててくれたのだ。すべて無料で、そのうえ昼食と夕食券までついていた。そして、今度ゆっくりバンコクに来ることがあったらぜひ家に来てくれ、と自分の住所までおいて行ってくれた。すべては私たちがムスリムであるというだけの理由による親切である。ムスリムには旅人に一宿一飯を提供する「義務」がある、というハディースを最近読んだばかりだったが、その実践に我が身が預かることになったという格好だった、アルハムドリッラー。

 案内されたホテルの部屋は申し分なく、夕食のビュッフェ形式のタイ料理は豪華で、非常においしかった。ただ、昼食の時にランチセットを頼むと、ベーコン入りのスープが運ばれてきたので、別のものと代えてもらいながら、「ああ、もうイスラーム圏を出てしまったのだな」と、安心して何でも食べられるサウディアラビアが恋しい気持ちになった。