10月6日

 アーイダが私をイスラーム式の結婚式に連れて行ってくれるという。以前、私が家のみんなと小路で行われた男女ミックスの普通の結婚式に行ったときから気に掛けてくれていたのだ。連れて行かれた家には、入り口に照明が付けられていた。案内された部屋は、普段は物置にでもなっているのだろうか、剥き出しのコンクリートの壁に、木の台が置かれただけで何の飾り付けもない。6畳よりずっと小さい部屋だ。そこにぞくぞくと黒衣の姉妹達がやってきた。見ると、普段はほとんど化粧っけのない彼女達が、今日は口紅を付けている。それからまもなく白いウエディングドレスの花嫁が登場、台のうえに乗せた椅子に着席した。と、太鼓を持った姉妹が台のうえに上り、彼女の音頭でみなが唄い始めた。手拍子を打ちながら唄う唄は、みなアッラーを称える唄だ。反復的なメロディーでなかなか調子が好い。部屋はぎゅうぎゅうづめで、子供は圧し潰されかねないくらい。押しくら饅頭になりながら唄い続ける。太鼓打ちの姉妹は、いつのまにかヴェールを脱ぎ捨てていた。花嫁は唄のリズムにあわせることもなくすまして座っている。アーイダの説明によると、新郎とその友人たちはモスクでお祝いをしているらしい。やはりアッラーを称える詩をみなで朗読しているということだ。この日の結婚パーティーは、新居入居を祝うもので、2人はすでに1年ほど前に結婚契約書を交わしてしている。その際にもパーティーが行われたそうだ。このように結婚式が2度行われるケースは少なくないらしい。つまり、花嫁が見付かっても、新郎に住むべきアパートや家具一式を買うだけの財力がない場合は、花嫁は委託という形でそのまま実家で暮らし新居の支度の整うのを待つのだ。契約書を交わした2人は公的には夫婦と認められ、デートももちろん解禁となる。イスラームでは結婚という枠内以外の男女交際は考えられないから、適齢期に達した男女はなるべくはやく結婚するように勧められるが、最近は経済的問題からしたくてもできない男性が少なくないという。