9月5日

 知り合いが1人増える毎、その知り合いを介してさらに友人の輪が広がってゆく。まず、エジプト人と結婚したユーコさん。長男の名にちなんでウンム・アーダム(アダムのおかあさん)と呼ばれる彼女は、オーストラリアにワーキングホリディで滞在中に友人を通じてイスラームに出会い入信している。日本に帰ってもムスリムなんでいないだろうから結婚出来ないかもなあ、と思ったそうだが、結局イスラームを知るきっかけとなった友人と結ばれ今ではエジプトに住んでいる。彼女の両親は、ユーコさんの求婚相手がまじめで、酒も女遊びもやらないと聞いてわりとすんなり結婚を認めてくれたそうだ。

 ユーコさんに紹介されたフランス人ムスリマ、シルヴィーは、やはり現在のご主人と知り合ったことがきっかけで入信している。エジプト人と結婚したお姉さん夫婦を訪ねた弟からイスラームについて聞いたシルヴィーは、たちまちそれを真理と受けいれ、家族の大反対を押し切って1か月後にはその弟と結婚、エジプトに渡ったという。縁結びとなったお姉さんの結婚の方は結局うまくいかなかったらしい。すべてが許されすべてが自由な現代の生活に漠然とした疑問を持っていたシルヴィーは、善は善、悪は悪とはっきり断じ、生き方の理想を具体的に提示するイスラームの力強さにうたれたという。

 シルヴィーの他にもフランス人ムスリムと知り合いになったが、青い目をした彼女らが優雅にヴェールをひるがえし、アルハムドリッラー、インシャーアッラーなどという言葉を差し挟みながらフランス語で会話を交わすのを聞いていると、とても不思議な気持ちになる。

 シルヴィーの友人でフランス語を話すエジプト人ムスリマ、スージーが、姉妹たちが外国人ムスリマの入信談を聞きたがっているから、と熱心に誘うので、彼女が週1遍開いているという夜の勉強会に出掛けてみた。
時間より少し遅れて行くと、俳優が親戚にいるという彼女のアパートの大きな応接間にはすでに20人近い姉妹があつまってスージーの話に耳を傾けていた。私には全く理解出来なかったそのアラビア語の講義ののち、スージーの手招きで前に出た私は、フランス語で姉妹たちに、どういう経過でムスリムになったかを語った。

 留学先のパリでイスラームに出会い入信したこと、以前から宗教には大きな関心をもち、いろいろな宗教に人や本を介して接し、次第に神の存在を確信するに至ったこと、けれどもどうしても信仰を得られなかったこと、つまり頭で理解しても心で神を感じることができなかったこと。そんなある日、ムスリムの友人の勧めでモスクに行き、そこで出会った姉妹とイスラームの勉強を始めたこと、そしてすぐにその真理を悟ったこと。あんなに求めても感じられなかった神をイスラーム式のお祈りをしたら間近に感じることが出来たこと。1か月後にはシャハーダ(信仰告白)を唱えムスリムとなり、クルアーンのアラビア語の美しさに魅せられイスラーム圏への留学を決意したこと。そんなことを思い出し思い出し話しているうちに通訳するスージーの声がなんだか胸にものがつかえたようなおかしな感じになっているのに気付き、ふと顔を上げてみた。すると、ちょうどすぐ前に座った姉妹の目から涙がこぼれ落ちるのが目に止まった。