8月28日

 アーイダ夫婦にさそわれて、ご主人のいなかに1泊がけで出掛けた。カイロから車で2時間ちょっとのところ。農業国エジプトだけあって畑に次ぐ畑が続く。とうもろこし畑がよく目につく。日本よりも葉の緑が濃く、とうもろこしの実自体は黄色というよりは白に近い。

 農村には緑が広がり小川が流れているが土はやはりパサパサと乾いている。荷車を引いた馬や人を乗せたロバが通る。女たちが川で洗濯をしている。がちょうやあひるややぎが軒先に放たれている。子供達ははだしで土まみれになって遊んでいる。

 予想に反してアーイダのご主人の実家は大きなコンクリート3階建ての家だった。といってもそれは構えだけで、実際人が住めるようになっているのは1階だけだ。2階はいずれ結婚し同居する息子たちのためにそれぞれ3LDKの間取りが取ってある。今のところは剥き出しのコンクリートの壁に窓が入っているだけで、私達はそこに据えられた来客用のベッドに寝た。3階に案内されて行ってみると、そこはうさぎやらにわとりやらの小屋になっていた。目下建築中か、というとどうもそうではなく、この状態ですでに何年も経っている様子だった。カイロの街でも、いなかに来る途中の道々でもコンクリートの外装だけの2階、あるいは3階をよくみかけたが、あれは計画性がないためではなく、かえって先の長い計画性のためだったのかもしれない。

 夕方涼しくなってから畑に散歩に出た。しばらく歩いたあと座って休んでいるとマグリブ(日没後)の礼拝の時間を告げるアザーンが聞こえて来た。そこで私達は牛小屋の陰に入ってビニール袋を敷いて礼拝した。建物の立て込んだカイロでは見られない鮮やかな夕焼けが西の空一杯に広がっていた。

 翌日の昼食にはがちょうを食べた。生きているのをけい動脈を切るところから熱湯に浸けて羽根を毟り、内臓をえぐり出すところまですっかり見た。けい動脈を切られたがちょうはすぐには死なない。跳びはねて血を流すままにさせる。切ってみせたのはアーイダのご主人だが、普段はこれは主婦の仕事なのだろう、主婦も相当たくましくないとやってられない。