8月25日

 カイロの町はほこりっぽくきたなく、殺伐としていて正直言って好きになれない。エジプト人から、エジプトはいいところか、きれいだと思うか、と聞かれる度、返事に困る。きれいだと思うのはナイル川両岸の眺めくらいか。そこには近代的な高層ビルが深く生い茂る木々を足下に立ちそびえ、長く掛けられた橋には自動車が車体を魚の腹のようにきらりと光らせながら走り、いかにも大都会の様相を整えている。

 しかし、遠目には美しいそれら陸の魚も、実はポンコツのガタビシ車ばかり。ピカピカのメルセデスも時々みかけるが、大低は、よくも動くと思われるような代物で、徹底的に乗り潰されている。

 庶民の足となるのはバスで、これには大型と中型、さらにマイクロバスの3種類がある。大型の方は、運賃が安い代わり大低は鮨詰めで、始発のバス停では席を取ろうとみな我先に乗り込んで行くからあまり女性向きではない。それでも、子連れの女性がいれば席を譲ったり、あるいは子供をひざに乗せてあげたりしている。バスは、乗客の乗り降りにきちんと停車しないこともあり、男たちは走っているバスに追い掛けて飛び乗ったり、交差点などで徐行している間に飛び下りたりしている。中型、マイクロの方は、定員制で、座席に空きがあればどこででも人を拾って行く。マイクロバスにはほとんど行き先表示はなく、同乗した子供が行き先を叫んで通る。そうでなければ、こちらから走る車に向かって声を張り上げて尋ねなければならない。

 相当のスピードで走る車の端を、農作物を積んだ馬やロバが軽い鈴の音をたてて通る。どこから来てどこに連れて行かれるのか知らないが、時々らくだの大群も通る。とても奇妙な光景だ。